小林 正之 入社13年目
美山町で生まれ育った小林さん。
現在の母屋はトタン屋根が覆っていますが、元々は葺き下ろしの茅葺き屋根。
雨漏りなど不便に感じることもありましたが、子どもながらに屋内の静けさや夏の涼しさ、自然の中で暮らす力強さのような不思議な魅力を感じていました。大人になった今では、古民家特有の大きな広間で家族と過ごした時間が豊かな思い出だと語っています。
茅葺き職人の世界に足を踏み入れたきっかけは、中野親方(現会長)が屋根裏の茅を引き取りにきた際、勧誘を受けたことです。
「茅葺きは百姓の技の一つと言われています。屋根を葺くだけでなく、生活に根ざした技術を学べることも魅力でした。」
また、それまで工場勤務だった小林さんにとって、自然の中で四季を感じながら働ける仕事という点にも惹かれたそうです。
現在は屋根仕事をしながら、農業や地域のしめ縄グループの代表を務めるなど、地域社会への貢献にも挑戦しています。
「美山町も少子高齢化が進み、人口が減少しています。自分の子ども世代に未来を繋げるためにも、茅葺きと農業を掛け合わせて、田舎暮らしをより現実的で魅力的なものにしていきたいです。」
茅葺きに関する活動(ワークショップや茅刈り)だけでなく、農業体験などを通じて田舎暮らしの魅力を身近に感じてもらう活動も少しずつ始めています。子育てをしながら毎日を充実させることができる、そうしたモデルケースとなれるように奮闘中です。
地元出身者として、次世代に何を残せるか、何を伝えることができるのかを考え、今できることを実践。
茅葺職人として茅葺き屋根を守り続けるだけでなく、地域活性化や持続可能な暮らしの魅力を発信していくことが、自分の使命だと感じています。
伝統を守りつつ、その技術や文化を現代の生活に生かしていくことが重要です。
「茅葺きは昔話の中だけのものではありません。今の時代だからこそ、茅葺きの家に住む。そんな人が一人でも増えるように頑張りたい」と、小林さんは力強く語ります。